ずっと憧れている人がいます。
俺より二つ年上で・・・なのに天然で放って置けなくて。
彼女の隣に立ちたいと何度願ったか。
あの人が俺を好きになってくれる100の方法、
教えてくれますか?
君
が
僕
を
好
きになる
100
の
方法
シン・アスカ、ザフト学園中等部に通う男子中学生。
常闇の髪に真紅の瞳という美しい顔立ちに心奪われる女子学生も多い。
そんな彼にも長年の悩みが一つだけあった。
それは“片思い”という、年頃の少年少女には最早欠かせない恋愛問題の一種である。
シンもまた例外ではなかった。
「キラさん!」
「おはよう、シン君。ルナマリアちゃんも」
「おはようございますっ!」
息を切らして駆け寄ると、亜麻色の髪を揺らして少女がにこりと微笑んだ。
途端にシンの心臓がどくりと跳ねる。
頬を染めて笑みを返す少年の背中を、からかうように紅い髪のクラスメイトが突いた。
亜麻色のサラサラなショートヘアに大粒で極上のアメジストが揃う。
厚い冬用コートの下に隠された見事なプロポーション。
右に出る者はいないと言われる学問の優秀さ。
通りを歩けば誰もが振り向くザフト学園高等部のアイドル。
彼女こそシンの幼馴染であり憧れの女性、キラ・ヤマトだ。
かつてアスカ家とヤマト家はお隣同士だったのだが、ヤマト夫妻の仕事の都合で引っ越す事になり、
一人娘のキラだけは進学の為に此方のマンションで一人暮らしをしている。
そのマンションもアスカ家に程無く近い場所なので、シンもよく遊びや手伝いに行っていた。
昔から気の合う同級生であり、何かと協力してくれるのがルナマリア・ホーク。
シンがキラを想っている事を知る彼女はこれ以上無い味方だ。
特に最近ライバルらしき人物の出現にシンは焦り、ルナマリアへ相談を持ち掛けていた。
「朝から元気だな、中学生組は」
何時の間にかキラの隣に立つようになった少年。
銀髪にサファイアの瞳が際立つ、相手の名はイザーク・ジュール。
ずっとシンが求めていたポジションをあっと言う間に浚って行った者である。
聞く所によるとキラと互角の好成績を誇るエリートらしい。
「・・・おはようございます、イザークさん」
「あぁ」
少しだけ嫉妬心も含めて挨拶してみるが、イザークは特に気付く様子も無い。
これが年上ゆえの余裕なのだろうか?
実際キラの恋人なのかどうかは知らないのだけれど、二人の様子を見ると違うとは思えなくて。
決して諦めないと誓ったシン。
ルナマリアは悩むシンにアドバイスを開始したのである。
題して『ルナマリア直伝・恋に勝つ100の方法』。その方法の一つが、これだ。
「あのっ・・・・キラさん! 今日、俺に・・べ、勉強教えてくれませんか!?」
「僕がシン君に?」
「シン、この前の定期試験で数学の点数落としちゃったんですよー。
それでキラさんは数学大得意だから、勉強教えて貰ったらどうかな、って私が」
きょとんとするキラ。
言うだけで精一杯らしいシンに代わり、ルナマリアがサポートした。
かく言う私も英語教えて貰いたいんですが、と付け加えて。
どきどきしながらキラを見つめるシンの表情は実に中学生らしい表情だった。
駄目だろうかと不安になる彼だったがキラはまたにこりと微笑んだ。
「うん。僕で良ければ」
「ほ、本当ですか!? 有難う御座います・・!!」
「じゃあ放課後僕の家で良いかな? ちょっと今散らかってて悪いけど」
「はいっ!!」
彼女の承諾にシンは心の中でガッツポーズを決める。
それから学校へ行く為に歩き出した四人だったが、ルナマリアがシンを小声で呼んだ。
(ねぇシン・・・君、昨日風邪引いて熱出してたでしょ?
昨日の今日だし、やっぱり止めた方が良いんじゃないかなって思うんだけど)
(はぁ? 何言ってるんだよルナ!)
シンは前方でイザークと話すキラをじっと見つめた。
(せっかくのチャンスなんだ。俺は絶対無駄になんかしたくない!)
しっかりと頷く彼にそれならば止めないけどとルナマリアも小声で返す。
何だかんだで長い間彼の恋を見守って来た彼女。
イザークには悪いが是非キラにはシンと結ばれて欲しいと願っていたのだった。
風邪での体調不良も省みず、ルナマリアの作戦を強行したシン。
しかしやはり無理が祟ってしまったのか。
(ぅ・・・何か目の前が、暗・・・)
―――ガッターン!
「シン君!!!」
キラのマンションにて勉強中、突然シンは意識を失い倒れてしまった。
彼の額の熱さにルナマリアは驚く。
「やだ、凄い熱・・・だから今回は止めといた方がって言ったのに!!」
「?」
「あ、いえ・・・私、薬や飲み物とか買って来ます。その間シンお願い出来ますか?」
「任せて。僕がちゃんと面倒見るよ」
彼女が頷いたのを確認すると、ルナマリアは鞄を引っ掴んで大急ぎで駆け出す。
キラは荒い呼吸を繰り返すシンを心配そうに見つめた。
「あれ・・・」
「シン君!! 良かった、気が付いたんだね・・・」
ずきりと痛む頭。
だるい身体。
重い瞼を上げ、ぼんやりと見慣れたようで見慣れない天井に真紅を向ける。
すると視界の端に安堵の表情を浮かべるキラが映った。
「俺、何で・・・」
「シン君ね、凄い熱出して倒れちゃったんだよ。覚えてない?」
「いや全然・・・すいませんキラさん、迷惑掛けて」
シンは彼女に迷惑を掛け、且つ結局チャンスを棒に振った事に酷く落ち込んだ。
看病して貰えたのは嬉しいが流石にその比ではなかった。
だけどそれを気に掛けず優しい微笑みで諭してくれるのがキラで。
「そんな事無いよ。でもこのまま眼を覚まさなかったら、って思って・・・心配だった」
苦笑いを浮かべるキラに自身も曖昧な笑みをした。
また意識が遠くなってきたシンはもう少し休んだ方がと勧められて目を瞑った。
若干眠って目覚めた時もキラは傍らに付き添っていた。
半ば虚ろな真紅を向けるとその度に温かな紫と微笑みで返してくれる。
シンは力が入らない身体を無理矢理起こしてキラを見つめた。
「わ、シン君! まだ寝てないと・・」
慌てて寝かせようと自分の肩に手を置くキラ。
その細くて綺麗な彼女の手を取ってシンはそっと握り締めた。
「キラさん。俺とイザークさん、どっちが大事?」
「・・・・は?」
「だからこの俺、シン・アスカとイザーク・ジュールさんのどっちが大事?」
「ど、どっちって言われても・・・二人とも大事だよ? 決まってるじゃない」
頭の上に?マークを浮かべつつもキラは答えた。
その答えに若干不満そうにしながらも、シンが彼らしくも無い不敵な笑みを浮かべた。
「じゃあ・・・・どっちが好き?」
「えぇっ!!?」
一瞬にして顔を真っ赤に染める彼女が可愛いなと思う。
あわあわと慌てふためく様がいかに恋愛に関して疎いかを物語っていた。
しかも一人で百面相をし始め、真っ赤になったり真っ青になったりと何とも忙しい。
お陰でなかなか回答が得られなかった。
しかしその態度にほんの少し期待が生まれた。
もしイザークならこれ程悩まずとも、まだ早く答えられると予測したからだ。
たっぷり10分は迷ってから、意を決したようにキラは口を開いた。
「イザークは好き。ルナマリアちゃんも好き。だけど・・・」
キラは包まれている手とは逆の開いている方で自分の胸に押し付けた。
女性特有の膨らみを感じてシンはどきりと鼓動が高まる。
「シン君は、もっと好きなの・・・」
首まで赤く染めたキラは、聞こえるか聞こえないか位のか細い声で呟いた。
彼女の答えにシンは一瞬卒倒しそうになった。
思わず引っ掛けるような形で聞き出してしまったけれど、キラが自分を特別に想っていてくれた事に
胸が一杯になった。短い人生の中で一番幸せだと感じる。
「あの、シンく・・・」
「―――シン。・・シンって呼んで・・・・キラ」
「っ!!!」
年上なのに一挙一動が自分よりも遥かに幼い。
恥ずかしさの余りまともに目も合わせられないキラに、シンはそっと触れるだけのキスを送る。
初めは何をされたのかも理解出来ずにぽかあんと目を見開いたまま。
行為の意味に気付くと、途端に可哀想に思えるほど真っ赤になった。
「キラ。証拠見せて」
誰も知らない彼女の一面に満足した。
だけどもっと調子に乗ってしまうのも人間の性か。
「見せてくれるよね? 俺が好きなら」
「う・・・・・わ、分かっ・・た」
さてどうするのかな、と。
シンはにっこりとキラへ余裕たっぷりに微笑んで見せた。
一方のキラはそれ所ではなく一人で唸っている。
それから「よし!」と気合を入れる声が聞こえたかと思うと頬に柔らかいものが触れた。
キラの唇だと解るのに然程時間は掛からなかった。
「・・・・ど、どう?」
相変わらず赤い顔のままで彼女が言った。
「ま、いっか」
キラからキスを−頬だったけれど−貰えただけでも良しとするか。
シンはちょい、とキラを手招きする。
首を傾げて顔を近づけて来たキラを一気に引き寄せ、シンはそのまま深く口付けた。
逃れられないように頭を自らの手で固定する。
キラは初めは抵抗するべくシンの肩を叩いていたが、やがて力が抜けた手はそのまま添えられた。
ぐっと強く重ねると、時折漏れる水音とキラの切ない声が酷くいけない事のように感じる。
こんな行為も何もかもシンだって初めてだったがもう勢いに任せていた。
やっと長年の想いが実ったのだから。
「・・・・俺もキラが好きだよ」
力無く凭れ掛かるキラを抱き締めながら、シンは彼女の耳元でそっと伝えた。
「おはよう、キラっ!」
「シン・・おはよう」
すっかり体調を取り戻したシンは毎朝の習慣でキラに声を掛ける。
キラもうっすら頬を染めながら微笑みを返した。
今までと同じようで違う二人にルナマリアはくすりと笑った。
お互い呼び捨てになり、敬語や何処と無く余所余所しい態度が綺麗に消え去った。
そしてイザークがいたポジションにも今やシンが当然のように収まっている。
「・・・・不満ですか? 『妹』を取られて」
仲睦まじく談笑しつつ先を行くシンとキラ。
二人の様子を後ろから見ながらルナマリアは隣を歩くイザークに話し掛けた。
「寧ろ呆れているな。初めから相思相愛なんだからとっととくっ付けと言うに」
「でっすよねぇ〜。よくこんなんで二人ともやって来れましたよね」
「我が妹ながら・・・本当に恋愛方面には疎いからな・・・」
イザークはやれやれと溜息をつく。
実は彼、イザーク・ジュールはキラの実の兄だったのだ。
訳あってファミリーネームも別、離れて暮らしていたが、最近イザークが近場に越して来たのである。
キラから兄の存在を聞かされていなかったシンは大いに勘違いしたという訳だ。
そしてイザーク自身、前々からキラにシンの事で相談を受けていた。
シンがルナマリアにしていたのと全く同じ、“片思い”という恋愛問題について。
偶然シンより先にイザークと出会いを果たし、また一連の事情を知ったルナマリアは
イザークと協力してシンとキラを結ばせようと企んでいたのだった。
結局二人の予想以上に時間は掛かってしまったのだが、結果良ければ全て良し。
ルナマリアとイザークは、繋がれた二人の手を見る度に微笑みが浮かぶのを隠せなかった。
■Present by 七輝遊佐
実は管理人サイトの元フリー配布小説だったりします。(使い回しかい・・)
一人で勝手にツボに入って叫んでいる中学生シン×女子高生キラ。
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